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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.08.15,Fri
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Posted by ino(いの) - 2008.09.17,Wed
我が心の兄貴、ブラック・タロン氏へ奉納しました。
4×Dです。苦手な方はスルー夜路刺苦。



まだ春も訪れたばかりのすこし肌寒い日。

僕はいつも通り、自分の仕事机で日々のプリベンダー業務に追われていた。

遠くから、ばたばたと大慌てで廊下を走る音が聞こえてくる。

まーた、デュオかい?

いいかげん廊下を走るのは止めたほうがいいのに。



バンッ!!



またやってる。

ドアは叩きつけて開けるものじゃないんだ。

いつも僕があれだけ言ってるのに…。



「カトル!!」



なんだい、デュオ?

僕はここにいるけど…って、あれ?デュオの声じゃない。



「カトル、大変だ!!」



五飛じゃないか、珍しいな。

君がそんなにあわてているなんて。



「どうしたんだい、五飛?君らしくもない」

「悠長に仕事をしている場合じゃない!」



そのまま五飛は僕の手を引っ張ってどこかに連れて行こうとしている。



「一体どうしたというんだい?何かあったの?」



僕は読みかけの書類を手にしたまま。

仕事中のはずなんだけどさ。

僕も、君も。



「ドロシー・カタロニアがたおれた」

「はい?!」

「だから、ドロシー・カタロニアが仕事中にたおれたと言っているんだ!」



何ですと?!

五飛、君が何を言っているのかよく分からないんだけど…。

倒れたって、誰が?

ドロシーが…?

仕事中にたおれた…?

たおれた…?!





……………………………………………!!?





≪しばらくおまちください≫





「ド、ドロシーが!?」

「反応が遅い……」



何がなにやら、事を飲み込むには少し時間がかかった。

ドロシーが、たおれた……?

あのドロシーが?

あんなに元気そうだったじゃないか。

今朝だって僕にメールくれて……。



「ヒイロが車の手配をしてくれている。さっさと行け!」

「う、うん」



気がついたら僕は五飛に、そのままプリベンダー本部の地下駐車場の入り口まで引きずられて来ていた。

とりあえず、五飛、知らせてくれてありがとう。

ヒイロが運転する車が僕たちの前に止まった。

僕は、持っていた書類を五飛に押し付けると、急いで車の助手席に乗り込んだ。



「ごめんね、ヒイロ。お願いだけど急いでくれないかな」

「了解した」



…………って、ヒイロ!それじゃあスピード違反だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(涙)



そのまま、僕たちを乗せた車は目的地までフルスピードで飛ぶように走って行く。

すでにギアは5速をこえ、メーターは高速道路並みに軽く100kmを振り切っている。

いくらなんでも、これはヤバイ!!

ごめんね、巻き添え食らったほかの車のドライバーさんたち!!

これじゃあ、道路交通法違反でキップきられちゃうよ!

…こんなことがレディさんにばれたら…、きっと、反省文10枚は軽くこえちゃうよね。



「着いたぞ」



見慣れたカタロニア邸の玄関前で、車が止まった。



「ありがとう、ヒイロ」



僕はシートベルトをはずすのも………って、そういえば僕、慌てていてシートベルトするのを忘れていたみたいだ。

事故にならなくてよかった…。(汗)



「遅かったな…」



トロワまでここにいるの!?

ああ、そういえば、今日はデュオと2人で彼女の護衛だっけ?

…あれ?そうだっけ?

まあ、いいか。



「先ほど医師に見てもらった。俺は診断を聞かされていないが、すこしの間安静にする必要があるらしい」



普段「廊下を走るな」と口をすっぱくしてデュオに言っている僕だけれど、そんなこと今はどうでもいい。

長いカタロニア邸の廊下を、僕とトロワは猛ダッシュで駆け抜ける。

いや、走る僕にトロワが付き合ってくれていると言った方がいいかな。

彼女のいるはずの部屋に行く道中、彼女の様子を淡々と教えてくれる。



「デュオが医師から病状を聞いているはずだ。詳細は奴に聞いてくれ」



そのまま、僕たちはドロシーの寝室に向かう。



「おっ、ようやく到着か」



部屋の前にはデュオが立っていた。



「ごめんね、デュオ。彼女は大丈夫?」



僕は息もきれぎれに、デュオのジャケットに掴みかかった。



「大丈夫も何も…。お前本人が彼女に聞いてやれよ」



いつも明るいデュオの顔が、少しくもるのが見て分かる。



「そんなにひどい病気なのかい?」

「ひどい…かもしれないな…」



デュオの言葉に、僕はすこし息を呑んだ。



「もしかして、彼女は死んでしまうとか、そんなんじゃないよね!!」



僕は嫌だ!

彼女を失うなんて絶対に嫌だ。

ぎゅっと力いっぱい、血が出やしないかと思うくらい強く手を握り締めた。



「これはカトルたちの問題だ。お前の心の赴くままに行動すればいい…」

「そうだぜ、案ずるよりは産むが易しってな」



デュオ、トロワ、ホント2人の言うとおり、そうかもしれないね。

でも、安心はしたくない。

まだ、彼女の口からその事実を聞いていないから。



「何、ぼやっとしてんだよ。さっさと中に入って会ってやれよ。心細いと思うぜ彼女」

「そうだね。ありがとうデュオ、トロワ。迷惑かけたね」



そうだ、まだそうだと決まったわけじゃないんだ。

僕は、彼女の部屋のドアをノックした。



「どうぞ…」



彼女の声が返ってくる。

いつもより元気がないと思うのは気のせいかな?

僕は思い切ってドロシーの部屋に入った。

その後ろから、デュオの声がする。



「俺たちは本部に先に戻るぜ。ついでにカトルのことも報告しとくよ」

「あ、ありがとう。デュオ」



そして、デュオがこう付け加えた。



「頑張れよ!パパ」



パパ?

君は何を言ってるんだい、デュオ。



「カトル、どうかしましたの?こんな時間に」



ドロシーは、ゆったりした薄桃色の部屋着を着て、備えつけの大きなソファーに座っている。

その膝に、雑誌を広げて。



「ド、ドロシー。君、たおれたんじゃ…」



予想とは全然違う。

僕は君がベッドで寝ていると…。



「たおれましたわよ。確かに」



彼女はいつものように平然と言ってのける。



「大丈夫なの?起きていて…」

「大丈夫でなかったら、今ごろこんな事していませんわ」



確かにそうだけど…。

なに?

デュオたちの口ぶりからして、僕はもっと重大な病気に君がかかっていたんだと…。

ええっ?!

どういうことだい?



「何をそんなに、ほうけていらっしゃるの?まあ、そちらにおかけになって。今、紅茶をお入れするから」

「…デュオたちは、一大事みたいに僕をここまで引っ張ってきたんだけど…」



とりあえず、ドロシーの座っていたソファーの反対側に僕は座る。



「……確かに、一大事……かもしれませんわね」



ドロシーは、飄々と僕の前に紅茶の入ったカップを置いた。



「一大事ととるか、そうでもないととるか…、それはカトル次第ですわ」



何気なくそう言いきると、ドロシーはまた元の場所に座りなおした。



「……聞かせてくれるかい?君が倒れた理由を」

「そう、たいしたことではありませんわ」

「そう、たいしたことじゃないのなら、何で僕がここに呼ばれてきたんだい?」

「あれは、デュオ・マックスウェルが勝手に大騒ぎしただけですことよ」



相変わらずの強気な彼女。

僕に対しては、いつでもそうだ。

でも、僕は彼女の本当の姿を知っている。

本当は、とても繊細で傷つきやすくて、誰よりも優しい女性なんだ。



「話したくないの?」

「話すほどのことではありませんから」



本当にそうだろうか?



「今朝まで、あんなに元気だった君が突然たおれるなんて…、僕は驚いたけどね」

「………」

「本気で、心配したんだよ」



ドロシーが、大きくため息をついた。



「あまり、気乗りはいたしませんけど……、知りたいのでしたらお話しますわ」

「是非、お願いするよ」



僕は力をこめて、そう答えた。

いつでも僕は、君の力になってあげたいんだ。

だから、どんな些細な事だっていい。

僕に話してくれないか。

たとえ、それが僕を拒絶する言葉だったとしても…。



ドロシーは、もう一度ため息をつくと、何か意を決したかのような表情をすこし浮かべ、ポツリと呟いた。



「……わたくし、妊娠しましたの。今三ヶ月に入ったところですわ」

「はい?!」









はい…………?!



………な、何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?





「…え、ニンシン……ってあのウサギが大好きなオレンジ色の根菜類…」

「それはニンジンですわ」

「そ、それじゃあ、北の方で獲れる魚」

「それはニシンですわ」

「………えっと…」

「無理にボケなくてもいいですわよ」



……ニンシン…?

妊娠って事だよね…。

それにさっき、デュオが僕のことを確か「パパ」って言った……。



「ほ、本当なの?」

「さあ?」

「さあって…」

「あなたが望まなければ、それも無しにできますわ。おろせばいいことですし」

「えっ?!」



いけしゃあしゃあとした彼女の言葉に、僕の頭は大運動会が始まっていた。

おろす?



「おろす…って魚を三枚に…」

「魚を三枚おろしにしてどうしますのよ…」



いけない!

落ち着くんだ、カトル・ラバーバ・ウィナー!!

落ち着かないといけないんだ!!

『宇宙の心』よ、僕はどうすればいいんだ!!

教えてくれ!プリーズ!!



「ぼ、僕たちの子供って事なの?」



僕はやっとのことで言葉を搾り出した。

確かに、身に覚えはあるけど…。



「ほかに誰がいますの?」

「……思いつかないけど…」

「なら、余計な心配は必要なし、ですわ」



どうやら、いきなりのことに、僕はものすごくおかしな顔をしていたらしい。

ドロシーのどこか人を小ばかにしているような表情が、突然崩れた。

口元にその細くて白い手を持っていき、必死に笑いをこらえている。



「…………っ!!」

「?」



ドロシーはもうこらえきれなくなったんだろう。

笑いをこらえるのをやめ、盛大に笑い出した。



「ドロシー?」

僕はわけがわからない。

首をかしげている僕に、ドロシーは大笑いしながらこう短く、言ったんだ。



「……嘘ですわ」

「はい?!」



ウソ?!

ウソだって?!



「ウソって…鳥の」

「もう、そこまでボケなくてもいいですわよ」



やっとのことで思考回路が普通に機能し始めた。



「………嘘なの?」



いたずらを成功させた子供みたいに、まだ彼女は笑っている。



「みんなや僕に嘘をついたのかい?」

「共犯」

「みんなも!?」

「発案はデュオ・マックスウェル、わたくしはそれに乗っただけですわ」

「どうして、そんな嘘を…?」

「今日は何月何日?」

「4月1日…、エイプリル…フール…!!」



ようやく、今日が4月1日だということを思い出した。



「だから、だから…こんな嘘を…?」



とぎれとぎれに、僕は呟いていた。

頭の中で、大爆笑しているデュオや、他のみんなの姿が浮かんでくる。

みんなして、僕を4月バカだと……。



「……ひどいや」

「そう言わないで。みんなあなたのことを心配してのことですから」

「みんなが僕の何を心配してるって言うんだよ!」



声が荒くなるのに気がついていた。

でも、みんな、ひどいよ。

僕がどんな思いで、ここに来たのか…。



「カトル、今日であなた、何日お休み抜きですの?」



ドロシーの諭すような言葉に、僕ははっとした。



「わたくしも、あなたに合わせてお仕事をしていましたから、今日倒れるまで、まったく気がつきませんでしたわ…。もう二ヶ月もお休みを取っていないということに」



そうだ、よく思い出したら、最後に休暇をすごしたのは今から二ヶ月前…。

バレンタイン・デーもホワイト・デーも、僕はプリベンダーとウィナー家、両方の仕事で1日も休みをとることをしなかったのを思い出した。

「もしかして…、君がたおれたって言うのは…」



「過労、ですわ。医師からはそう診断をうけました。だから、いくらあなたが元ガンダムのパイロットだとは言え、わたくしと同じ状態なのではないかと思ったんですの」



……ドロシー、君ってひとは…。



「わたくしは今日から一週間、お休みをとらされましたわ。まったく、わたくしとした事が…。これではリリーナ様のお仕事が多くなってしまう…」



きっとリリーナさんのことだ、ドロシーに無理やり休暇届を書かせたんだろうな。



「大丈夫だよ。彼女にはヒイロっていう、すご~いお目付け役がついているんだから。彼がついていたら、大丈夫」



クスリ。

思わず笑みを浮かべてしまう。

さっきまでの怒りはどこに行ったんだろう?

僕は、遠まわしながらも僕のことを心配してくれる彼女がとても愛おしく感じた。



「わたくしの場合は、わたくしがあなたのお目付け役をしなくてはいけないのかしら?」



いつもの嫌味な言葉づかい。

それもが、すべて愛おしい。



「た、確かに、今まで気がつかなくて君まで巻き込んでしまったのは謝るよ。ごめんね」



僕は、いつの間にか彼女も巻き込んでしまったんだと気がついた。

僕がお休みを取らないから、合理的な彼女も僕に合わせて仕事を続けていた。

僕は彼女を労わることが出来なかったんだ…。



「本当にごめんね、ドロシー」

「別にいいのよ、カトル。わたくしが、そうしたいと思ってそうしていたのですから」



優しい彼女の言葉。

ふいに見せてくれる、僕だけが知っている彼女。

もっと僕だけにそんな君を見せて欲しい。

僕って、ほんとに欲張りだよね。



「ありがとう、ドロシー。僕も、今やっている仕事を片付けたら、久しぶりに休暇を取ることにするよ」



そうだ、久しぶりに休暇をとろう。

ゆっくり休んで、君とのんびりお茶でも飲んで…。



「その必要はないと思いますわ」

「へっ?!」



これからを考えていた僕を、ドロシーの一言が現実に引き戻してくれた。



「今ごろヒイロ・ユイ達4人が、あなたの仕事を片付けてくれているはずですから」

「ヒイロ達が?!」



カップの紅茶を口にしながら言ったドロシーの言葉に、また僕の頭は運動会を始めかけた。



「ですから、この冗談を実行する条件として、『他の四人で今日から一週間分のあなたの仕事を片付ける』ということを約束したんですの。そうでなかったらこんな茶番をわたくしが引き受けるわけがないでしょう」



……なにから、何まで…。



「だから、しばらく休めなかった分、ゆっくり休んでくださいな。カトル」



まったく、君って人は…。









………そうだ!

いい事、思いついちゃった。

僕をこんなにも驚かせてくれた、君への仕返し。



手加減はしないからね、ドロシー。

どうせ、明日もお休みになったことだし。

まだ、夕方にも早いけど。



「ねえ、ドロシー」



僕はゆっくりと彼女を見た。

胸に、密かなる野望を抱いて。

ドロシーは何も言わずに、見ていた雑誌から目を上げ、僕を見た。



僕って意地悪だよねって改めて思っちゃったりもする。



「嘘、本当にしちゃおうか」

「!?」



ニヤリ。



「カ、カトル。あなた何を…」

「そのままの意味だけど」



僕はにっこり笑ってソファーから立ち上がった。

彼女が身じろぎするのが分かる。

無駄だよ、絶対逃がさないからね。

僕をおどろかすと高く付くんだから。



「カトルッ、時と場合を考えて…」



事態を察したらしい彼女はキッと僕をにらんでくる。

そんなところも含めて、ほんとに君はかわいい人だよ。

僕はそんなことを頭の隅で思いながらも、彼女の唇を貪るように奪っていた。

僕は君だけを、世界中の誰よりも僕のものにしたいんだ。





エイプリル・フールの嘘は、あの後どうなったかって?

それは、僕と彼女の秘密だよ。

でも、僕が彼女とある約束を交わしたのは、それからすぐだったかな?

え、確信犯?

何とでも言って。



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へたな言い逃れはいたしません、小森はカトル×ドロシー肯定派です。
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