Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by ino(いの) - 2008.09.17,Wed
「はい、リリーナ。熱いから火傷しないでね」
「ありがとう、ヒイロ」
「お砂糖とミルクはどうする?」
「両方くれ」
以下、同じような会話が続く。
「「「「「………………(汗)」」」」」
お日柄もよろしい、某月某日某曜日。
平和も平和、どこぞのテロ(と書いてバカと読む)の火遊び(事件)も無く。
「お茶にしようか~」と、本日内勤扱いでプリベンター本部に出勤していた某パツキン坊ちゃんの提案(脅しとも言う)により、やはりパツキン坊ちゃんのお気に入りミルクティーと、目の前のカップルが差し入れに持ち込んでくれたキャラメルモカロールでレッツ・ティータイム。
そんな中、お茶の席に集まった面々は、不思議……いや、奇妙奇天烈に異様な光景を目にすることになる
「デュオ、紅茶のおかわりはどうだ?」
「……イ、イタダキマス……」
「ヒ、ヒイロ。モカロール、私にも一切れもらえるかしら?」
「あら、ごめんなさい、サリィさん。今お入れしますわ」
「………………(汗)」
さて、感のよい方々はそろそろお気づきであろう、この違和感。
目の前の、よ~く見知っているこの2人。
そう、当人等まったくの無自覚でいちゃついてくれやがる天然バカップル。
世界のアイドル外務次官とその専属星の王子様こと、リリーナ・ドーリアンとヒイロ・ユイ。
何がおかしいって、2人の話口調が普段とまるっきり違うのだ
特に、ヒイロ。
普段、無口無愛想朴念仁を地で通すこの男が、丁寧にかつやさしい言葉使い。
逆に、リリーナは、普段の礼儀正しさを微塵も見せず、表情はいつものようにニコニコと愛らしいのに、その口から発せられる言葉はまるでヒイロのよう……。
ん?
まるでヒイロのよう……?
そう、違和感の原因は、ヒイロとリリーナの口調がまるっきり逆転しているということだった。
あのヒイロが、リリーナのような言葉遣いとあっては、驚きのあまり唖然と目を見開くわ、せっかくのミルクティーを噴出すわ、青褪めたあと真っ赤になりわずかに震えだすわ、何か悪いことの始まりか?!と怯えるわ、周囲の反応も戦々恐々。
そんな中、ちょっと意外という顔をしたものの、その程度では己のペースを崩すことはないのも、やはりこのパツキン坊ちゃんだった。
「ヒイロ、リリーナさん、面白い遊びだね」
「ああ、最初は難しいが、なれるとなかなか面白いぞ」(リリーナ)
「カトル君もやってみます?」(ヒイロ)
ゾワゾワゾワゾワッ!
ヒ、ヒイロ、止めてくれ!
いつもの仏頂面でリリーナのようにしゃべるのは……!
どこからか、誰かの叫びが、そう聞こえたかもしれない。
『遊び……』
『なんでぇ、遊びかよ……』
『遊びだったのか……』
『てっきり何かのショックで人格が入れ替わってしまったかと思ったわ……』
こっそりと、すばやく目配せして交わされる会話。
日頃、ヒイロという人間が、どういう目で見られているのか、よく分かる。
「へぇ、どんな遊びなの?」
ギクッ……。
そんな擬音が一同の後ろに表示されそうな雰囲気の中、その発言は発せられた。
普通の人間なら、こういうことに下手にかかわることは避けるだろう。
無類の面白がりか、なにかしら遊ぶことの大好きな人間は別として。
そして、幸か不幸か、問題のこのパツキン坊ちゃん。
普通の人間でもなく、無類の面白がりな上に、遊ぶことが大好きな人間、と見事3拍子そろってしまっていた。
「最初に、1から6までの番号でそれぞれに『アクション』を決めておく」
「サイコロを振って、出た目によって、どういう『アクション』をとるのかが決まるんです」
ゾクゾクゾクゾクゾクッ!
だから、ヒイロ…… 以下省略。
コロンとヒイロがポケットから出してきたサイコロとメモ用紙。
メモ用紙を覗き込んでみれば、確かに『3)お互いの口調を交換する 期間:1時間』と書いてある。
他にも、『左右の手の動きを入れ替える 期間:仕事が終わるまで』『会話に必ずことわざを入れる 期間:半日』『何があっても最高の笑顔 期間:今日一日』『会話はすべて演劇口調 期間:帰宅するまで』『何があっても筆談、ゼスチャーも禁止 期間:半日』などと、「何だこの罰ゲームは?」と突っ込みたくなるような、ある意味豪華なこのラインナップ。
「じゃぁ、2人はこの『お互いの口調を交換する』と言うのをやっているのね?」
他の面々よりいち早く復活したサリィが、気を取り直して2人を見た。
「その通りだ」
リリーナが肯定し、ヒイロはうなずく。
「へぇ、楽しそうだねぇ~(^^)」
「そうだなぁ~。意外に新鮮かもなぁ~」
カトルの言葉に、デュオが相槌を打つ。
しかし、デュオもこの時点で気が付いているべきだった。
カトルの目が、生き生きと輝いているということに。
「ねぇ、デュオ。君だったら、どんなのがいい?」
「ん~、そうだなぁ……。ヒイロみたいに、お互いの口調入れ替えっこってのも面白そうだしなぁ……」
む~、と考えるデュオの横に居たトロワと五飛はそれぞれにこう思った。
薮蛇……。
キジも鳴かねば撃たれまい……。
明らかに、このまま行けばカトルのペースに巻き込まれるだろうというのは目に見えている。
いや、もしかすると、すでに巻き込まれているのかも。
「でも、半日ってのは少ないかなぁ。僕なら、丸一日やってみようかな~?」
何気に怖いことを言わないでください、カトル坊ちゃま。
残りの3人の視線が、そう言っている。
しかし、この御仁、我が道を直球ど真ん中で押し行くお強い御仁。
「じゃぁ、ここを、半日から、1日ぃ~に直して……」
どこから出したのか、ペンで線を引き、書き直す。
『すでにやる気満々かっ?!』
その場に居た者満場一致の突っ込みは、後が怖いので口に出されることは無かった……。
「たまには気分転換も必要だし、皆もやってみようよ!」
つーか、すでにやることは決定済みになっているような気がするのは、俺(私)の気のせいか?
いいえ、気のせいではありません。
目の前には、期待に胸膨らませ、目をキラキラ生き生きと輝かせているパツキン坊ちゃん。
残念ながら、逃れられるはずがありません。
それ以前に逃してくれるはずがありません。
「あ、でも、ペアになるには1人少ないね……」
そう、この場に居るのはヒイロ、リリーナ、デュオ、トロワ、カトル、五飛、サリィの7人。
ヒイロとリリーナはそもそもペアであるので、残りの5人でペアを組むとなると、必然的に1人あぶれることになる。
「な、なら、俺は遠慮しておく」
それをチャンスとみなした五飛の言葉は、誰よりも早かった。
『五飛、抜け駆けはずるいぞ~……』という、デュオとサリィの視線が痛い。
どんな目で見られようとも、これから後のことを考えると、まだマシだと五飛は思う。
だが、向こうはまだ上手だった。
「あ、ドロシー?今、本部の近くに来てるんだよね?今から面白いことするから君達もおいでよ」
何ですとっ?!
まだペアの決まっていない残りの4人は、いっせいにカトルを見た。
「うん、そう、いつもの部署。大丈夫、君達なら顔パスでしょ~。フフ、うん、じゃぁ待ってるね~」
ピッ、パチン
携帯をたたむ音がやけに大きく聞こえたのは気のせいだろうか……。
カトルは、手にしていた携帯電話をジャケットの内ポケットにしまうと、にこやかにこう一言。
「やっぱり、こういうことって皆でやらなきゃ、楽しくないよね♪」
生贄1人増員確定。
今日は厄日だ……、と、このネタを持ち込んでくれやがった問題のバカップルを、4人は心のそこで恨んだのだった。
と、そこでデュオは、先ほどのカトルの会話に聞き捨てならない言葉があったことに気付く。
「はい、質問!」
「なんだねぇ~、デュオ君?」
先生に質問する生徒よろしく、カトルに向かってビシッと右手をあげるデュオに、エッヘンとそれにノるカトル。
「今、『君達』って聞こえたような気がしたんだけど、俺の気のせい?」
「ううん、気のせいじゃないよ」
嫌な予感がデュオだけではなく、あとのトロワ、五飛にまで走る。
「ま、まさか……」
「そ、そのまさか」
この時のカトルの笑顔ほど、凶悪に見える笑顔は無かったと、後に彼らは語る。
「今日はね、ドロシー、ヒルデさんやキャスリンさん誘って、この近くのデパートでショッピングなんだって」
「マジかよ~っ!?」
「マジだよ~♪」
生贄急増!
と、いうより、こんなことがまかり通るほど暇でいいのか、プリベンターよ?
「で?」
「で♪」
「ショッピングの最中に呼び出されてみれば……」
「いいじゃない、楽しいことは皆でやらなきゃ♪」
人はこれを巻き添えを喰らった、と言う。
最初は渋ったドロシーだったが、リリーナのヒイロ口調にまた何か萌えどころを発見したのか、「意外といいですわね……」と参戦決定。
残りの2人も、元々キャスリンはこういう遊びは好きなクチだ。
ヒルデも、気が付けばデュオに丸め込まれ、参加せざるを得なくなっていた。
二者択一。
ここで断って、ブラックモードカトルを味わうか?
このまま、何が起こるか想像したくもないゲームを堪能するか?
何にしろとも、ブラック化したカトルなんて、拝みたくもないということで、二者択一どころか選択肢は最初から1つしかないようなものだ。
せめてもの抵抗(?)として、ペアだけは自分たちで選ばせてくれ……。
と、いう、デュオの主張が通り、ペアリングは以下の通りに。
・デュオ&ヒルデ ( ← ちょっと引き気味のヒルデが、デュオのシャツの裾を離さなかった)
・トロワ&キャスリン ( ← どうせ、帰る場所もいっしょだし~♪というキャスリンの強引なる押し)
・カトル&ドロシー ( ← 必然的に、残るはこうなる?)
・五飛&サリィ ( ← 「共同戦線!」と五飛もサリィも、そう断言して譲らない)
ちなみに、ヒイロとリリーナの2人は、すでにサイコロを振っているということで、パスだったりする。
「じゃっ、始めよう~♪」
と、取り出したは、某バラエティ『ご●げん★う』で有名な、カラフルで大きなサイコロ。
「そんなもの、どこから持ってきたのか?」という疑問は、ご都合主義と言うことで、この際、言いっこなしである。 ( ← マテ)
「じゃぁ、僕からいくよ~♪」
カトルの手から、一抱えもある大きさのサイコロが投げられた。
どんな目が出るのか?
それは誰も予測不可能。
丁と出るか半と出るか、ワックワク、ドッキドキのこの一瞬。
もはや罰ゲーム状態のこの状況。
状況打破の賽は投げられた。
結果は、神のみぞ知る?
「あらあら、なかなか面白いことになってきましたね」
サイコロひとつで大騒ぎしている面々を横目に、ミルクティを一口。
壁に掛かっている時計は先ほどからすでに1時間を経過。
自分たちの『アクション』は、タイムアップ。
元に戻った口調のリリーナは、ワイワイと盛り上がっている皆を見てニコニコと微笑む。
ヒイロはヒイロで、テーブルの上に転がったままの小さいサイコロを片手に、毎度おなじみ。
「任務、完了」
さて、今度はどうしようか?と、サイコロを軽く放り投げる。
再びヒイロの手に戻ってきたサイコロの目は『1』
「まぁ、じゃぁ、今度はこれね♪」
「…………(--;」
ヒイロ自身は、この遊びを続けるつもりは無かったのだが……。
もはや開き直って向きになっている向こうの面々を横目に、ヒイロは小さくつぶやいた。
「勘弁してくれ……」
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お、お願いだから、石は投げないでっ!(T人T)
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