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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.08.20,Wed
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Posted by ino(いの) - 2008.09.17,Wed
 


目の前に立っている、雨でずぶ濡れの女の子と、その腕に抱かれた黒い塊。

「ごめんなさい。でも、放っておけなくて……」

濡れた寒さのためか小刻みに震えるその両方を、放っておくわけには行かなかった。





「お前は、こっち」
「でも……」
腕の黒い塊を奪うように受け取ると、彼女の背をバスルームに押し込んだ。
「一度に両方の面倒は見切れない」
そう短く言い放つと、バスタオルと彼女が着れそうな白い綿のシャツを渡す。
腕の中の黒い塊が、かすれるようなか細い声で、その存在を主張した。
彼女同様、こっちも濡れてかなり冷たい。
慌ててバスルーム以外で湯を使えるキッチンに向かった。
シンクの排水溝に栓をし、湯沸かし器の湯をぬるめに調節して貯める。
黒いそれに、外傷が無いか手早く確かめ、首から上に湯がかからないようにシンクの中に入れた。
突然のことに驚いたのか、震えがいっそう大きくなる。
もとより、この種類は水に濡れることを嫌うことが多い。
ここで暴れられても困る。
「じっとしていろ」
それが通じたのか、それとも湯の温度が心地よくなったのか、しだいに震えも落ち着いてきたようだ。
棚からタオルを取り出すと、湯の中でじっとしていたそれをひょいっとつまみあげ、すばやく包み込む。
リビングで待ち構えているパネルヒーターの前に連れて行く。
タオルの白い布に、小さな黒い頭。
鼻先に水滴がひとつ。
小さな舌で器用にそれを舐めとった。
自分もヒーターの前に座ると、ガシガシと少々手荒だがタオルの中身を拭いていく。
その乱暴な行為に、その中身も非難の鳴き声を上げる。
が、さっきまでとはまったく違う居心地の良い環境におとなしくなった。




あらかた水気をふき取ると、そこには小さな子猫。
まじりっけのない黒。
目だけが少し灰色っぽい緑。
母猫とはぐれ、この寒い雨の日にアイツに拾われたのだろう。
そして、自分たちの住処でもあるこのマンションは、ペットを飼う場合敷金が家賃4ヵ月分になるということを思い出した。
すこしため息をつきたくもなる。
だが、しばらく続くであろうこの天気。
目の前の子猫。
アイツが手放すことをためらうであろうことは目に見えてわかる。
しかし、こういうことを一度許せば、似たようなことが何度も繰り返されることだろう。
そんな自分の思考に気が付いていない子猫は、居心地のよいヒーターの前で毛並みを必至に整えようと毛づくろいしている。
先ほどの後片付けをしようとキッチンに向かうと、その後を子猫はチョコチョコと付いてきた。
しょうがないので、冷蔵庫から牛乳のパックを取り出すと、小皿に少し出し、子猫の前に差し出す。
何かをもらえるとは思っていなかったのか、子猫は目の前に置かれた小皿を見るともの欲しそうにミャアと鳴いた。
「いいぞ」
犬のお預けではないが、そんな気分になったのは気のせいだろうか?
妙に行儀がいい。
もしかすると、どこかの飼い猫が迷ってしまったか、それとも捨てられてしまったのか。
子猫は、自分の『OK』の言葉が解るかのようにまた一声鳴く。
そして、チロチロと小さな舌を駆使して小皿に顔を突っ込んだ。





バスルームから物音。
彼女も温まって出てきたところなのだろう。
「お風呂、先に使いました……」
控えめな声。
「ああ、湯冷めしないように何か上に着ておけ」
それに対し、コンロにミルクパンを乗せ、牛乳パックに残った中身を全て中に流し込む。
「ホットミルクでいいか?」
「ええ、お願いします」
彼女はすまなさそうに上目遣いにこちらを見た。
条件は違えど、これでは先ほどと状況は変わりない。
この先が、少し読めた。
彼女の表情を見れば、何が言いたいのか大体見当が付く。
明日は手続きのために忙しくなるだろうな……と、ため息をついた。
そんな中、足元で、きれいに舐め尽した皿の前で子猫がひと鳴き。
まだ欲しいという催促だろうか?
期待に満ちた目で、見上げてくる。
「すっかり懐かれてしまったわね」
誰のせいだ、誰の。
一瞬、そう突っ込もうかとも考えたが、気を取り直して足元の子猫を見た。
「ヤマトは飲んだばかりだろう。まだ飲むのか?」
自分を呼ばれていることが解るのか、ミャアと返事をするように鳴く黒猫。
「ヤマト?」
彼女は不思議そうに首をかしげた。
「黒猫なら『ヤマト』だろう」
その言葉に、一瞬きょとんとしていた彼女は、ようやくその言葉の意味を理解したのか、満面に笑みを浮かべた。

「あなたから、そんな言葉を聞ける日が来るとは思わなかったわ、ヒイロ」



足元にすりより、ミィと鳴くヤマト。
とりあえず、これも家族が増えたということだろう。



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ちょうど、さっき宅急便が来たんですよね~、ヤマト便で。
うちのネコが寒いのか、いつもより5割り増しで甘えてきたときでして。

ネコを題材になんか話が……、ネコか~、名前どうしようかな~、ネコの名前はJavaかなんかで入力式にしようかな~とか、なんとか考えていましたが、ちょうど来ちゃったんですよね。
何がって、宅急便が。
クロネコが。(笑)

あとは、語るに落ちたっつーか……(遠い目)
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