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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.09.02,Tue
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Posted by ino(いの) - 2008.09.17,Wed
 


パタン、ガチャガチャ


「…………」
「…………」
「ミャァ~……」


カチャ、キュポ、チャポ


「…………」
「…………」
「ミャァ~ン」


パチッ、シャキシャキ、ピッ


「…………」
「…………」
「ミャオ~~ン」


ペタ、シュッシュッ、パチン


「…………」
「少し待っていろ、ヤマト」
「ミィ」

カチャカチャ、パタン


「…………」
「終了」
「ミャァ!」


どこか拗ねたような表情の女の子と、その横で一声鳴く黒い子猫
ヒイロはため息ひとつ、立ち上がった

「少し休んでおけ」
「…………ごめんなさい」

ずっとだんまりを決め込んでいた女の子が、ようやくうつむくようにして小声を発した

彼女の足には大きな湿布
ひざには大きくかぶせられたガーゼと、ところどころに貼られた絆創膏
両の腕に巻かれた包帯の白さが、やけに痛々しかった

「ミャァン!」

小さなヤマトが、また一声
何かを主張する

「ヤマト、リリーナは怪我をしている。傷に障るといけないから、今日は我慢しろ」

リリーナのひざに前の片足を乗せようとしていたヤマトをヒイロは摘み上げた

「ミャ~……」

言い聞かせても、猫に人間の言葉がわかるわけでもないとは思っているのだが、多少の気休めにはなるだろう
ヤマトは、その大きな目をヒイロに向け、何かを訴えている

「ヒイロ、わたくしは大丈夫よ?」

リリーナは、ヒイロの手につまみ上げられている小さな黒猫に手を伸ばした
が、ひょいとそれをかわすように、ヒイロはヤマトを床に下ろした
そのまま、そばにあった救急箱を取り上げる

「そもそもは、お前が勝手に外に出たのが原因だ」
「あら、一日中部屋に居たら、外にだって出たくなるわ」

ヒイロのぼやきに、リリーナは即座に反論した

「何かあってからでは遅い」
「だからって、外に出ちゃダメってことはないでしょう」
「……その『何かあった』後で、もっともな正論を並べても説得力はないがな」
「うっ……」

確かに、それは己の状態がしかと物語ってくれている
どう反論しようかと、リリーナは言葉に窮した

「だからって……」

なおも、何とか言おうとするリリーナと、足元でジーンズの裾にじゃれ付いてくるヤマトを見下ろして、ヒイロは何度目かのため息を盛大についた

「犬のように、猫にハーネスと散歩紐をつけて外に出るとでも言うのか?」

まったく、馬鹿馬鹿しいと肩をすくめるヒイロ

「猫は気侭な生き物だ、人間と飼い犬のようにともに歩くなどはしない。人間側の勝手な理由でその性質を変えられるものでもない」
「それはわかっているつもりですけど……」
「それを無理に猫とともに行動しようとした挙句、階段で転んで怪我をしたのでは本末転倒だろうが」

リリーナの怪我は、ヤマトを追いかけて、うっかりマンション入り口の階段を踏み外した際できたものだったのだ

「まだ子猫だ。外に出すにはまだ早い。外に出したは出したで、心配になってついていくのであれば、まだ出さなくてもいいだろうが」

リリーナ単体だけでも危なっかしいこと極まりないのに、さらに猫まで心配する必要があるとは……と、ヒイロはまたため息

「せめて、まだベランダだけにしておいてくれ……」

プリベンター本部から戻ってくれば、マンションの入り口でちょこんと座っている黒猫と怪我をしたリリーナ
いくら鋼鉄ワイヤー並の神経を持ち合わせたヒイロでも、さすがに背筋が冷えた
それなりに治安のよい場所を選んだつもりではあるが、それでも彼女の立場上、安心は出来ない
だが、そういう面、彼女は意外と無頓着だ

ヒイロは何度目になるのか数えるのもやめた大きなため息をもうひとつ
まだ、ジャレ付いてくるヤマトに向けて一言

「まったく、お前が勝手に外に行こうとするからこうなったんだからな」

足元の子猫に、そんなこと言ってもわかるわけがない
そうわかっていても、そう言わずにはいられない


そして、ヒイロのさす『お前』が、自分のことではなく、この小さな黒猫のことだということに、ようやく彼女は気付いたのだった




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そして小森は、状況設定の甘さと、傷の手当てをするときの音が意外と文章では表現しづらいんだということに、今更ながら気がついたのだった……(汗)


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