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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.08.31,Sun
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Posted by ino(いの) - 2008.08.04,Mon
 


遠く、昼刻を告げる鐘の音を耳に。

まだ暑さの残る空を見上げる。

窓から見える雲の数を数え、それが通り過ぎていくのを、じっと眺めた。

耳を澄ませば、近所のおばさんが昼食だと子供たちを呼ぶ声。



「おねーさん、どうしたの?具合でも悪いの?」
橙妖精のピッピが、そのくりっとした瞳を瞬かせ、覗き込んできた。
「ううん、元気だよ?」
なんでもないよ、と明るく返すと
「ダメだよ、おねーさんがそういうとき、いつもなにか我慢してるんだもん」
黒妖精の時からの付き合いだ。
ピッピにはお見通しらしい。
「大丈夫だよ、も~。それよりも、頼んでたロウ、できた?」
慌てて、話をそらした。
「うん。できたっておねーさんに報告に着たんだよ、見て見てっ!」
「どれどれ~」
ピッピに手を引かれて棚を見れば、そこにはちゃんとロウの山。
ざっと50はあるだろう。
「うん、いい出来ね」
よくできましたと褒めれば、嬉しそうに笑うピッピ。
「じゃぁ、これからフラムの作成に入って……あ、燃える砂が足りないや」
せっかく良質のロウができたとしても、頼まれた依頼をこなすには、材料が足りない。
まずは燃える砂を作らなければ……。
「おねーさん、カノーネ岩のストックないよ~」
「そういえば、最近ぜんぜん採取に行ってなかったなぁ」
「ダメだよ~、ちゃんと足りない分は採取しに行かなきゃ」
「ごめ~ん」
雇い人に叱られる雇い主なんて、きっとエリーぐらいだろう。
「じゃぁ、ピッピ。急いでエルフィン洞窟まで採取に行ってきてくれる?」
「任せて!」
ピッピは胸を張って、トンと胸を叩いた。



「……別に今から行かなくてもよかったのになぁ……」
ピッピはあの後、自分用にあつらえた採取かごを背負い、エリーが止める間もなくぴゅーっとアトリエを飛び出して行ってしまったのだ。
「よっぽどお外に行きたかったのかな……?」
ずっとロウを作ってもらっていたため、アトリエにずっと居てくれた。
もしかしたら、気分転換に外に行きたかったのかもしれない。
「じゃぁ、ピッピが帰ってくるまでの間に、私は作れるだけフラムを作っておこうかな……」
乳鉢を出してくると、慎重に燃える砂をいれかき混ぜはじめる。
それに、少しずつ溶かしたロウを混ぜ込んでいき…………。


気が付けば、窓から差し込む光は角度を変え、色もオレンジ色になっている。
わき目も振らず、一心不乱に燃える砂とロウをブレンドしているうちに夢中になっていたらしい。
大きな乳鉢の中には、ほとんど固まりかけたフラムの玉。
「あ、いつの間にか……」
目の前の窓からは、夕方の空が見えた。
「もう、こんな時間なんだ、ん~、時間がたつのは早いなぁ~」
まだ暗くはなっていないとは言え、夕暮れ時だ。
もうすぐ、夕刻を告げる鐘も鳴るだろう。
「さて、続き続き……」
乳鉢を抱えなおし、すりこ木を持ち直した。
燃える砂の色で赤い乳鉢に、夕方のオレンジ色の光が差し、本当に燃えているかのようにも見える。
その光景に、エリーは顔を上げ、窓の外を見た。
まだ青みの残る空に、クリーム色を帯びた雲。
西の空は、もう赤い。
青と赤の境目は、二つの色が交じり合って不思議な色をしていた。
「……きれい……」
まるで、コメートを広げたような色。
エリーは、そんな風に思う。
しばし手を止め、その空に見入った。



ドンドンドンドン!



乱暴にドアをノックする音で、エリーはハッとした。
気が付けば、空の色はもう薄暗く、もうすぐ夜。
あたりを見回せば、当たり前だが工房の中は真っ暗。
「オイ、エリー居るのか?」
ドアを開けて入ってきたのは、シグザール城の門番……もとい、ダグラス・マクレイン。
そして、調合用の机にいるエリーを見つけた。
「なんだよ、いるじゃねぇか」
大きく開け放ったドアをダグラスは閉めた。
「ダ、ダグラス?」
「灯りがついてねぇから、またぶっ倒れてるんじゃないかと思った」
そういうと、勝手知ったるアトリエの中、ランプに灯りをともす。
ぱぁっと真っ暗だった工房の中が明るくなった。
「どうしたの?」
まだ、彼に依頼されたフォートフラムは作り始めたばかりだ。
「どうしたのもなにも、お前んとこのチビすけが昼間俺んとこに来たんだよ。お前の様子が気になるから、頼んだって」
キュッとランプの火屋をかぶせると止め具で止めた。
「んで、仕事終わって来てみりゃ、こんな時間なのに工房には灯りが着いてないしな」
よっと、壁にあるランプ用のフックに引っ掛けると、部屋中に明かりが行き届いた。
「で、また倒れてるんじゃないかって?」
「そういうこと。チビすけの言ってることも気になったし、お前、また無理してるんじゃないのか?」
青い瞳が、エリーの顔を覗き込んだ。
「べ、別に無理なんてしてないよ。それに、ダグラスがギガフラム6個なんて依頼してこなかったら、もっとのんびりしてるよ」
「そうか~?お前のことだから、暇ができたら飛翔亭で依頼しこたま引き受けてきそうだけどな」
「うっ……」
正解。
あたっているだけに、反論できない。
「ほれみろ」
ピンッと人差し指で鼻先をはじかれる。
「いった~い!ダグラスひどぉい」
抗議の声を上げてみるが、笑ってかわされた。



ポツリと、
「採取に出かけたとか、思わなかったの?」
「それはないな」
エリーの言葉を、自身を持って一刀両断するダグラス。
「お前、採取に行くときは、必ず俺を連れて行こうとするだろ?」
そう言われてみれば……。
「そ……だね」
それが当たり前かのように、採取のときはいつでも彼を頼る。
「それくらいは解るようになるさ、お前との付き合いも長いんだし」
かれこれ何年になるんだ?というダグラスに、「3年だよ~」と、エリーは笑って返した。
「で、なにかあったのか?」
そして話題は最初に戻る。
「う~ん、別に何かあったわけじゃないんだけどね、空見てたの」
「空?」
「うん、ちょうど、この位置から窓の外見るとね、雲とかきれいなんだよ」
先ほどまで座っていた椅子をポンと叩く。
そして、「あ、ダグラスはいつもお城の門で、空見てるか」と、付け加えた。
「それでね、色が変わっていく空を見てると、なんだか、見入っちゃったみたい」
えへへ、とごまかし笑い。
どんどん暗くなっていく空を見ていると、なんだか寂しくなった。
本当は、そう言いたかったけれど…………。
「ふ~ん、空、ねぇ……」
なにかを考えるように、窓をみるダグラス。
「……寂しかったのか?」
彼は、この言葉に確信を持っていた。
そこには、きょとんとしたエリー。
「なんで、わかったの?」
わたし、そんなことちっとも言ってないのに……と不思議がる。
ダグラスは、しょうがないなと言わんばかりに苦笑し、小さなため息をついた。
「どれくらい、お前を見てきたと思ってるんだ?」
なぜなら…………。
「お前、泣き出しそうな顔してたからな」
ずっと、彼女を守ってきた彼だから、
ずっと、錬金術師を目指してがんばっているエリーを見てきた彼だから、
「私、泣きそうな顔、してた?」
「してたな」
今にも泣き出しそうで。
自身を暖める光を失った子供のような顔で。


だから、


「無理してんじゃねーよ。そういう時は俺を頼れ」
守ってくれる言葉。
「ダメだよ、私、ダグラスに頼ってばっかりだもん」
と、苦笑して返すと、
「ガキのうちは、大人に頼ってりゃいいんだよ」
と、笑い返された。
「私、もう子供じゃないよ~」
もうすぐ、初めて出会ったときの彼と同じ年齢になるのに。
「まだ、俺の前では無理に大人にならなくてもいいさ」

ダグラスは、目を細めてエリーの茶色い髪を撫でた。
まるで、小さな子供をいつくしむように。

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うぉ~い、なんちゅー終わり方やねん。

さて、依頼内容は、ギガフラム
もち、マクレイン氏がご注文(笑)
ギガフラムはオリジナルでしか調合できないので、大体オリジナル調合ができるようになるのは3年目くらいかな~と、こんな時期です

妖精を雇ったり、依頼を請け負ったりこなしたりするには、やっぱり大人にならざるを得なくなると思うんですね、精神的に。
だけど、まだ、大人になりきれないそんな時期もある。
それは、日常のちょっとしたことで出てくると思います。

大人になっていくことも大切だけど、ふとしたときに出てきた感情も大切にしたい。
最近、そう思う今日この頃です。
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