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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.08.27,Wed
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Posted by ino(いの) - 2008.08.04,Mon
 



雨期が過ぎ、久しぶりの雲ひとつ無い青空がバラムの地を訪れた。
雨ばかりで、じめじめしていたガーデンは、いっせいにこの晴れ間を狙って、晴れた日にしか出来ない事を始める人がいっぱいになった。

「久々のお天気だねぇ~」
「そうだな」

まだ、少し雨の影響の残った中庭を歩くのは、バラムガーデンの名物と化してしまった有名カップル。

「う~ん、いっぱい雨が降るとお天気の日が嬉しくなるね~」
「そうか?」
「うん。あ、でも、お天気ばっかりだと、逆に雨が嬉しくなるんだよね~」
「そんなものなのか?」
「うんっ」

学生寮の方向を見れば、窓のあっちこっちで寝具を窓から広げている様子が見える。
やはりせっかくの晴れなのだから、ひさびさに、寝具にも風を通したい。

「あ~、みんなお布団干してる。スコール、わたしたちの部屋も久しぶりにお布団干したいね~」
「別にどっちでもいい」
「もう、お布団干すと気持ちいいんだよ。ぐっすり眠れるんだから」
「俺はそれよりも、久々にゆっくり寝たい」
「そっか、スコール、最近寝る暇も無いくらい忙しかったもんね」

SeeDのお仕事は雨期も乾期も関係ない。
もちろん、寝不足も考慮されずにどんどん仕事はやってくる。
その傾向は、スコールほどの実力をもつ者なら余計に顕著だ。
中には某国大統領という、仕事というより私事でちょくちょく呼び出す奴もいるのだが、それが余計に疲れを増徴させる。

「というわけで、部屋に戻るぞ、俺は」
「え~っ」
「文句は昨日まで、しょうもない理由でまた俺を呼び出していた、あのはた迷惑な大統領に言ってくれ」
「ラグナおじさんだって、スコールに会いたいんだよ~」
「俺はかまって欲しくない。貴重な休暇をあいつに何度つぶされたか……」

しかも、その『貴重な休暇』の中にはリノアとのお出かけなども入っていた。
当然、予定はみなキャンセル、膨れっ面のリノアが後に残る。
そんな彼女の様子に後ろ髪を引かれながらも、仕事だからしかたがないといざ行かん、行ってみればノー天気な某国大統領のこれまたノー天気なお出迎え。
もちろんその場で、一撃必殺グーパンチというところで今回は許してやろう、で済んだのはスコールの気まぐれ。
後に転がるは、それでも明るい某国大統領もとい、明るいお父さんのなれの果て。アーメン。

「ラグナさんも、スコールと遊びたいんだったら、私も呼んでくれたらいいのに~」
「SeeDとして仕事で呼ぶ以上、公私混同な使い方はしないで欲しいもんだ」
「素直に『遊びに来い』って呼んでくれればいいのにね」
「なら、俺は『誰が行くか』って返事を返すだろうな」
「スコールならやりかねな~い!」

スコールのあまりにも彼らしい返答にリノアは吹き出し笑った。
その反応に、しかめっ面のスコール。

「たまにならいいんだ、たまになら。しょっちゅうは鬱陶しい」

言い訳のように言うスコールの一言。
決してラグナを拒絶しているわけではない一言。
リノアにはそれがなんだか嬉しかった。

「じゃぁさ、ラグナさんとお話して、たまにこっちから顔出しに行くから仕事以外で呼び出すなって約束したら?」
「…………それをあいつが承諾すると思うか?」
「きっとね、再々呼び出してくるってのは、不安なんだよ、きっと」
「不安?」
「いつ、スコールが自分のことを忘れてしまうんじゃないだろうか、って感じかな?」
「そんなもんなのか?」
「よくわかんないけどね。でもさ、必ず来てくれるっていう確信があれば、ラグナさんもこんな事しないと思うんだ~」
「確信……」

妙に今日のリノアは説得力がある。

「そっ、今のスコールだと、仕事で呼び出さなければ、絶対ラグナさんに会ったりしないでしょ?」
「そうだな」
「だから、ラグナさんは不安なんだよ。仕事以外で会いたいのに、会えないってことが」
「俺にはわからん」
「それだけ、スコールのこと大好きなんだよ、ラグナさん」

二週間と間をおかず自分を呼び出すラグナ。
本当に、そんな思いをしているのだろうか?
隣で、一人確信したようにうんうんと頷いているリノア。
スコールは、なにか思い立ったというかのように、歩調を速めた。

「部屋に戻るぞ」
「えっ?あっ、待って~」

慌てて、リノアもそれにあわせて歩調を速めた。
何のためにスコールが歩調を速めたのか、リノアにはなんとなく分かった。
ただ昼寝をするためじゃない。
それだけは、確実に言える。









その日、エスタの大統領専用のプライベート回線に、一本の電話が入った。
電話の向こうはバラムガーデン。
電話のこちらと向こうで、どんなやり取りがあったのかは明らかにされていないが、それ以来、エスタの自称『明るい』大統領が私事でSeeD司令官を呼び出すことはなくなった。
そして、年に数回、大統領の息子が定期的に顔を見せに訪問してくれるようになったのだ。
傍らに、黒髪の女性を連れて。





その事に、大統領補佐官2人を含めたエスタの財務管理担当者は、ホッと胸をなでおろしていたのは、まったくの余談であろう。



とりあえず、エスタは今日も平和だ。

どこかで『おじゃるよ~』が口癖の、某マッドサイエンティストの声が聞こえてはいたのだが。


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小森のイメージでいう、ラグナパパって見事なまでに子煩悩だと思うんですよ。
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