Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by ino(いの) - 2008.08.04,Mon
「じゃぁまた来るね、エル姉ちゃん」
「うん、ミルカッセさんによろしくね」
「うん、バイバイ」
「バイバ~イ」
アトリエの入り口で、大きな紙袋を抱えた幼い少年。
ちょっとゆるいクセのあるこげ茶色の髪と、グリーンのくりくりっとした大きな瞳をにっこり細めた少年は、抱えた紙袋をよっと抱えなおしポテポテと歩き始めた。
あ~、妖精のチビ達を少し大きくしたらあんな感じかな~?と、その2人の様子を見ていた巡察中のダグラスはぼんやり頭の端っこでそんなことを考えてみたり。
「あ、ダグラス!」。
そんなダグラスに気がついたエリーは、両手をブンブンと振った。
「よう、ちゃんと今日も生きてるか」
「ちゃんと生きてるよ~ぉ」
工房の入り口にいるエリーの元へ、ダグラスはゆっくり歩いた。
「今のガキは?」
「ん?今の子?」
「おう、ここらじゃみかけねぇガキだなぁと思って」
職人通りの人ごみにまぎれて、小さな少年が歩いている後姿を見る。
「あの子ね、しばらく教会で暮らすことになった子だよ。名前はヒューイ君」
「ふーん、ヒューイね」
日ごろ、見回りに託けて子供たちと接触する機会の多いダグラスは、またどこかで会うこともあるだろ、と考えた。
「まだ小さいのに、ちゃんとお使いもできるんだよ~。すごいよね」
「ほ~、ちっこいのにそりゃえらいな」
あの年頃の少年なら、お使いやお手伝いよりも外で遊ぶことのほうがよほど魅力的だろう。
自分があのくらいの年頃だったころは、親の手伝いそっちのけで、走り回っていた時期もあったと、ダグラスは思いをはせる。
そして、ふと、あることに気がついた。
「お前、さっき『エル姉ちゃん』って呼ばれてたな?」
エルフィールのことを『エリー』、この街で彼女を知るものは、皆そう呼ぶ。
「ああ、『エルフィール』だから、別に『エル』でもいいのか……」
一人納得したように、つぶやくダグラス。
「なに一人でぶつぶつ言ってるの?」
「ん、別に『エリー』にこだわる必要はないなと、今更ながら気がついてな」
「?」
「なんか、あのガキだけが、俺を差し置いてお前のこと『エル』姉ちゃんって呼ぶのも微妙に癪に触るしな……」
「はい~?」
一人勝手にぶつぶつと話を進めるダグラスに、エリーは首をかしげた。
そのしぐさが、また愛らしいと思ってしまうのは、騎士の嗜みとしてここだけの秘密である。
「別に『エリー』でも『エル』でもいいんだが、俺の断りなく勝手につけるとはいい度胸だ……」
「もしも~し?」
何気に物騒なこと言ってませんか~?
この蒼い鎧の聖騎士さんは~?
そんなことが頭を掠めたが、気がつかないフリをしておこう。
「いいじゃない、小さい子供なんだし?私、多分『 エル 』って呼んでもらっても私のことだってわかるよ?」
「そういう問題じゃねぇ」
じゃぁ、いったいどんな問題だ?
一瞬そう突っ込みたくなったが、ここはあえて我慢しよう。
「変なダグラス」
首をかしげるエリーの足元で、紺色妖精のポポルはため息をついた
(明らかに、お兄さんの独占欲とヤキモチだよ……)
当のダグラス本人すらも、そのことにはまだ気がついていないようだが
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い、いいじゃないですか
『 エルフィール 』 なんだから別に 『 エル 』 でも!(←オドオド)
まぁ、安直ですけど……(汗)
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