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Null(ヌル)=そこに値がなにもないこと。何ら意味を持つ文字ではないことを示す特殊な文字。ここは"0"ですらない半端なものばかり。
Posted by - 2025.08.07,Thu
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Posted by ino(いの) - 2008.08.04,Mon
 



ゆっくりと目を閉じ、深く深呼吸する。



まだ、その時間は来ない。



それを待つ時間が、長くて、短くて、長くて…。



胸いっぱいに広がるこのドキドキを何とか落ち着かせようと、今日何回目かの深呼吸。



憧れていた夢。



ずっと待ち望んだ日。



すべてを決めた日から、この日が来るのを指折り心待ちにしていた。



早く明日にな~れ。



早く明日にな~れ。



早くわたしに幸せの時間を与えて欲しい。



毎日そう思っていたのに、



いざとなるとそれは



早くきたように感じられた。









結い上げた黒髪に差し飾ったバラの花の白が、くすんだ白に見えてしまうのは自分の装いのせいなのか?



動くたびに、シルクとオーガンジーのこすれる気持ちのいい音がする。



動くたびに、長く広がるレースがサラサラと音をたてる。



私の横で、輝くような金色の髪の女性がにっこり笑った。



「あんまり、そわそわしちゃ駄目よ。落ち着かないのは解かるけど」



確かにそうだね。



わたし、落ち着かなきゃ。



もう一度、深く深呼吸。



少し、気持ちが落ち着いたかな?



そのとき、部屋に茶色い髪をクルンとカールさせた女の子が部屋に入ってくる。



「あ~、丁度良かったわ~。カメラ、カメラ」

「こんな時もそれやるの~?」

「なにゆうてんねん。今日のこのキレ~な姿をカメラに収めんでどうするんよ」

「さすがだね」

「あたりきよ~。こんなオイシイ絶好のチャンス、逃したら皆に顔向けでけへんわ。あ、安心しい、本番はバッチシうち特製の『高性能赤外線センサー搭載・高画質撮影用デジタルカメラ』が2人を狙っとるで~。今日のためにうちは撮影用の特別実行委員会まで発足させてプロの撮影スタッフまで用意したんやで!」



……改めて、絶句。



すごいよ、君は。



「さあさあ、時間よ」



私たちがたわいのないやり取りをしているうちに壁時計の針が誓約の時間の訪れを指し示していた。



遠慮がちに入り口のドアがノックされる。



「……そろそろ時間だが、大丈夫かね?」



ドアの向こうから聞こえた、この世でただ一人の自分の父親の声。



「うん、大丈夫だよ」



本当に大丈夫。



もう、わたし、落ち着いた。



ゆっくりとドアを開き、入り口で待っていてくれた父親の前に出る。



「お前の…、母さんの姿を思い出すよ」



そっけない、けれど愛情のこもった一言。



「えへへ…。ありがと…」



少し、照れちゃうぞ、親父!



「行こうか?」



差し出されたその腕を取り、わたしは誓約の行われる場所に向かっていく。



気を利かせてくれたのかな。



女性二人は先に行ってくれている。



「…本当は、ここで『長い間、お世話になりました』って言うものなんだよね。こういうのって」



「……お世話になりましたと、行ってもらえるほどのことはしていないがな…」



わたしの何気ない言葉に、父親は苦笑した。



「ごめんね。今までずっと心配かけちゃって」



今なら、素直に言葉を口にできる。



意地を張って、今まで伝えることの出来なかった一言を。



「わたし、貴方の娘でよかったよ。ありがとう」



素直な、わたしの気持ち。



「…ふがいない父親ですまなかった」



かえってくる優しい声、優しい返事。



「これからは、彼に守ってもらいなさい」



父親の精一杯。



伝わってるよ。



「ありがと、『お父さん』…。大好きだよ」











誓約の時間。



誓約の場所。



……そして、世界で一番、愛しい人。



わたしは、この人に一生を誓う。



ねぇ、わたし、一生貴方から離れないよ。



貴方は、どう?



誓約の場所で、自分を待ってくれている愛しい人は、優しいそのアイスブルーの瞳でわたしを見つめてくれている。



嬉しいよ。



世界で一番、わたし幸せだよ。



わたしは、世界で一番欲しい誓いを手に入れる。



そして、貴方に永遠を誓うね。



ありがとう。



そして、これからもよろしくね。







わたし、世界で一番幸せな『魔女』だよ。



世界で一番私を想ってくれる『騎士』に守られた、幸せの『魔女』なんだよ。



幸せに、なろうね。



“スコール”

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根っからの『くだらんギャグ人間』の小森にはけっこう難産だったりして…。(笑)
これがスコールサイドだったら絶対にラグナパパが一発かましてくれるんだろうなあ。足つりながら
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